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WBG材料の台頭
シリコン(Si)は60年以上にわたり一般的な半導体材料として使用され、性能は絶えず向上してきましたが、現在はその理論的限界に近づいています。これにより、より高性能なデバイスを求めてワイドバンドギャップ(WBG)材料が導入されるようになりました。現在好まれている材料は炭化ケイ素(SiC)と窒化ガリウム(GaN)であり、酸化ガリウム (Ga₂O₃) を含む他の潜在的な材料についても研究が進められています。
WBGはすでにシリコンよりも優れた性能を持っていますが、主要な動作パラメータ、デバイスのパッケージング、熱管理の面で性能をさらに向上させる余地が大きく残されています。製造歩留まりの向上と300 mmウェハーへの移行により、コストも削減される見込みです。
WBG材料は、高出力・高温環境下でのスイッチング周波数の向上、効率の改善、小型軽量化、耐久性の向上など、電源設計においていくつかの利点をもたらします。WBGデバイスは、幅広い電源の設計において採用が進んでいます。
市場予測はさまざまですが、現在シリコンはパワー半導体市場の約80%のシェアを占めています。しかし、WBGデバイスは今後5〜7年間で15〜25%の年平均成長率(CAGR)で成長すると予測されています。
WBGとは何か?
シリコンのバンドギャップは 1.12 eV です。ワイドバンドギャップ材料とは、より広いバンドギャップを持つ材料のことで、SiCはポリタイプに応じて 2.23 eV 〜 3.26 eV、GaNは 3.4 eV です。これは、電子を価電子帯から伝導帯へ励起するためにシリコンよりも多くのエネルギーを必要とすることを意味します。これにより、WBG材料はシリコンに対して以下のような利点を持ちます。
- より高い絶縁破壊電圧
- より高い動作温度
- より高いスイッチング周波数
WBG材料は、以下を含むさまざまな用途で使用されています。
- パワーエレクトロニクス
- RF(無線周波数)およびマイクロ波デバイス
- オプトエレクトロニクス(光電子工学)
Si vs SiC vs GaN
電源装置において、SiCとGaNはどちらも従来のシリコン半導体に対して大きな利点を提供します(Fig.1参照)。
しかし、これら2つの材料にはいくつかの重要な違いがあり、それぞれ異なる用途に適しています。
デバイスの効率は、主に導通損失とスイッチング損失の組み合わせによって決まります。これらは電圧、温度、チップサイズ、寄生容量、ゲート電荷、スイッチング周波数などの要因に影響されます。
| Si | 4H-SiC | GaN | |
| Power Handling | up to 5 kW | 1 kW to MW | 100 W to 20 kW |
| Switching Frequency | 20 kHZ to 500 kHz | 10 kHZ to 1 MHz | 100 kHz to 10 MHz |
| Efficiency | Lower | High (lower conduction losses) | Higher (lower switching losses) |
| Voltage Ratings | up to 4.7 kV | up to 15 kV | up to 1200 V |
| Bandgap (eV) | 1.12 | 3.26 | 3.4 |
| Thermal conductivity (kWatts/cm²) | 1.5 | 5 | 1.3 |
| Critical breakdown voltage (10⁶V/cm) | 0.3 | 3 | 3.5 |
| Electron mobility (cm²/Vs) | 1500 | 950 | 2000 |
| Market Adoption | Well established | Default for high voltage high power applications | Highest efficiency choice for applications up to 650 V |
※デバイス性能の向上に伴い、いくつかのパラメータは時間の経過とともに変化することにご注意ください。
アプリケーション(用途)
GaNは通常、高効率と高電力密度を必要とする低電圧(< 700 V)の電源に適しています。例えば、家電製品(充電器/ACアダプター)、48 Vデータセンター/コンピューティング、医療機器、ドローン、通信機器、および幅広い産業機器などで使用されます。

(EU) 2019/1782やDoE Level VIなどの法規制基準により、外付け電源には最低効率レベルが義務付けられています。また、特定の用途では、組み込み電源のレベルを定義する任意の「80 PLUS®」認証も存在します。GaNの採用により、これらのますます厳格化する基準を満たすことが可能になります。
SiCは通常、インバータ、充電器、DC-DCコンバータ、太陽光・風力発電用インバータ、AIデータセンター、鉄道車両、航空宇宙、モーター駆動、ロボット工学 、堅牢な産業用途など、高電圧(> 600 V)かつ高電力(> 1 kW)の用途に適しています。また、長寿命と高信頼性が求められる用途にも適した選択肢です。
GaNを使用するメリット
GaN MOSFETは、電源設計においてSi MOSFETに対していくつかの利点を提供します。最近、デルタ電子はGaNの利点を活用した新しい600 W医療用電源(MEP-600A24J BRA)を発表しました。
GaNを採用することで、スイッチング周波数を大幅に高めることができ、その結果、磁性部品(トランス等)やコンデンサを小型化できます。GaNの高い効率は電力損失を低減するため、熱管理が簡素化され、かさばるヒートシンクを最小限に抑える、あるいは排除することが可能です。軽量化と電力密度の向上という大きなメリットが得られます。
前世代の製品と比較して、最大50%の小型軽量化を実現できるほか、電力損失を20%低減し、最大80℃までの動作(ディレーティングあり)が可能です。対流冷却性能の向上により、多くの用途でファン冷却を排除できるため、音響ノイズや潜在的な汚染物質の侵入をなくし、コスト削減にもつながります。
GaN MOSFETの研究が継続され、歩留まりの向上と生産量の増加によるコスト削減が進むにつれ、シリコンに代わる実行可能な選択肢としてより広い用途で普及し、一部の用途ではSiCに匹敵するものとなるでしょう。
Reference:
- Hardware Evaluation for GaN-Based Single-Phase Five-Level Inverter
- Gallium Nitride Power Devices in Power Electronics Applications: State of Art and Perspectives